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「タイパ」で選ぶ暮らしの投資 時間効率を高める「今」と「自分」の満足感

将来の計画を綿密に立てるあまり、現在の生活が後回しになってはいないでしょうか。老後資金や教育費などに備えることはもちろん重要ですが、その一方で「今」の満足度を削りすぎてしまうと、日々の暮らしはどこか味気ないものになりかねません。今回紹介する「タイパ投資」には、「節約」とは異なる発想があります。タイパ投資を始める際の具体的なポイントや注意点について、ファイナンシャル・プランナーの風呂内亜矢さんに聞きました。

忙しい現代人の「お金よりも時間を重視する」価値観

「タイパ」とは、コスト・パフォーマンス(費用対効果)にならった「タイム・パフォーマンス(時間対効果)」の略です。コスパが「払った金額に対して、どれだけの効果や満足度を得られたか」を示すのに対し、タイパは「使った時間に対して、どれだけの効果や満足度を得られたか」を表します。この言葉はここ数年で日常的に使用されるようになり、時間対効果の考え方は、商品やサービスの選び方にも強く影響するようになっています。

たとえば、ドラム式洗濯乾燥機や自動調理器具は、家事にかかる時間や手間を減らしてくれます。こうした家電を選ぶ人たちに共通しているのは、費用と削減できる時間を比較したときに、後者を重視する姿勢です。特に忙しさが増し、生活や仕事の選択肢が広がった現代では、お金の節約以上に時間の節約を重視する人が増えているのかもしれません。

このように、「時間を節約・有効活用するために、商品やサービスにお金を払う」という発想は、いわば「タイパ投資」として、私たちの生活に自然と受け入れられるようになりました。

では、「タイパ投資」を生活に取り入れるには、具体的にどうすればよいのでしょうか。出発点は自分の「時間の使い方の棚卸し」です。

まずは「何に時間を使い、どんな時間に満足・負担を感じるか」を整理する

まずは図1のように時間を仕分けしてみましょう。ポイントは、世間一般の“効率が良い・悪い”ではなく、自分自身の基準で整理することです。同じ家事や移動でも、ある人にとっては気分転換の時間になり、別の人にとっては強いストレスになる場合があります。まずは「何に時間を使い、どんな時間に満足・負担を覚えているのか」を思い出しながら、仕分けするところからスタートです。

図1 日々の生活時間を「満足度×負担感」で整理

 

日々の生活時間を「満足度×負担感」で整理
出所:風呂内亜矢氏への取材を基に作成

図1右下の「満足度が高く、負担感は小さい時間」は、無理に削る必要はありません。たとえば、料理そのものが好きな人にとっての調理時間などは、「効率性」という軸だけで判断すると一見価値がないように見えますが、むしろ生活の質を支える大切な時間として残すほうがよいでしょう。

次に、右上の「満足度は高いが、負担感も大きい時間」は、完全にやめるのではなく、やり方を工夫する余地があります。「料理は好きだが、平日の下ごしらえはつらい」という場合は、自動調理家電やミールキットを部分的に取り入れることで、楽しさを残しながら負担だけを減らせます。

一方で、左上の「満足度が低く、負担感は大きい時間」は、タイパ投資を検討しやすい領域です。大切なのは、「便利そうだから導入する」のではなく、実際に自分が真に負担を感じている時間を減らせるかを見極めることです。ここが合致していれば、支出以上に生活全体の満足度が向上するはずです。

最後に、左下の「満足度が低く、負担も小さい時間」は、あえて積極的にタイパ投資を検討する領域ではないと言えます。負担が小さいわけですから、投資をしてもその効果が期待ほど出ない可能性があります。効率化すること自体が目的になってしまわないように気をつけましょう。

私はこれまでFPとしてさまざまな人にお金との関わり方を聞いてきました。その中で、将来に向けた綿密なプランに熱中するあまり、今の生活の満足度が後回しになっていることに気がつかない方もいらっしゃいます。将来起こりうるライフプランから逆算して現在の支出を抑えるといった考え方はもちろん大事です。しかし、「今」の満足度も無視できません。「タイパ投資」という発想には、将来の備えだけを重視したマネープランに見落とされがちな、「今を豊かにする」ための重要な視点を与えてくれるはずです。

自分が日々の生活の中で何を優先したいのかを整理し、どんな時間に満足を感じ、どんな作業にストレスを感じているのかを見つめ直す。今の生活を改めて可視化することで、自分視点でお金を貯めるだけではなく、何にお金をかけるべきかが明確になります。

自分基準の感覚で訴えるよりも「時給換算」で説明

もちろん、費用面も無視することはできません。特に、高額な家電などを導入したいとき、自分の判断だけでなく、家族の理解や合意が必要な場面もあるでしょう。そうしたときの説明方法として有効なのが、「時給換算」という考え方です。自分の月間手取り額を労働時間で割っておおよその時給を出し、タイパ投資によって1日にどれだけ時間を削減できるかをもとに、何日で投資額に見合うかを試算します。

時給をベースにした話し合いは、自分基準の感覚で訴えるよりも、家族と必要性を共有しやすいでしょう。たとえば、10万円のドラム式洗濯乾燥機を導入し、洗濯物を干す・取り込む・天候を気にするなどの手間を含めて、1日あたり30分の時間を削減できるとします。仮に自分の月間手取り額が30万円、1ヵ月の労働時間が160時間であれば、おおよその時給は1,875円、30分あたり約938円です。

つまり、ドラム式洗濯乾燥機の購入により1日あたりに削減できる30分は、時間価値にすると約938円ということです。単純計算では、購入代金10万円を938円で割ると、約107日となり、3ヵ月半程度で購入代金を回収できる計算になります。毎日使う家電であることを踏まえると、家族にとって「高い買い物」ではあっても、タイパ投資に値する対象として説明しやすくなるでしょう。

図2 時給ベースで考えるタイパ投資

時給ベースで考えるタイパ投資
出所:風呂内亜矢氏への取材を基に作成

先述の通り、「タイパ」という言葉には、単なる流行語として片づけられない、暮らしやお金の使い方を考えるうえで重要な視点が含まれています。重要なのは、今と将来のどちらかを選ぶのではなく、両方を大切にすることです。タイパ投資という考え方を通じて、まずは「今」を大事にする視点にも注目してみましょう。

監修

1級ファイナンシャル・
プランニング技能士

CFP®認定者

風呂内 亜矢

(ふろうち・あや)

岡山県出身。電機メーカー系SIerを経て不動産会社に転職し、実体験を生かした営業で年間売上1位を達成。2013年に独立しFP(ファイナンシャル・プランナー)として活動。テレビ出演や新聞・WEB寄稿、著書多数。

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